一般
概要
「子どもの傷害予防」「環境安全工学」「救急看護教育」の3分野での事故防止教育を対象とし、教育を行うことで防ぎ得た重大事故・事故死を防ぐためのオンライン教育・学習を提供し、取り返しのつかない事故を一つでも多く防ぐために、次のようにMoodleのインターフェイスや機能を強化することで、LMS側から能動的・プロアクティブに学習者に作用することができる機能を持つLMSを実現する。- 音声ユーザインターフェイス (Voice User Interface; VUI) 付与により、声や音響でのインタラクションによる学習を行うことができ、スマートスピーカーを通じて、LMSからの「語りかけ」も可能にする。
- chatbot型インターフェイス付与により、学習者が日常的に用いているSNS等を介したインタラクションによる学習を可能にする。VUIと同様に、学習者からの操作がなくとも、LMSからのインタラクション開始ができる。
- Moodle Analyticsの独自モデル開発と機械学習バックエンドの拡張により、学習者行動の予測に基づいて、評価結果が確定した後ではなく、先回りしたタイミングでの指導や介入を可能にする。
- 学習者の学習ログや生体情報(脳波、呼吸など)から心的状態を推定することができるエンジンを開発し、推定された心的状態に基づき、LMSの動作を適応的に変化させることを可能にする。
これまでの研究活動
Deep Neural Networkにより学習者の生体情報(脳波、呼吸など)から心的状態を推定する機構を構築し[1][2]、高い精度での心的状態推定の結果が得られている。また、ユーザにとって心理的により身近なUI(ユーザインターフェイス)として、Moodle上の小テスト受験やドキュメント検索ができる音声UIを開発し[3]、LINE Messaging API のアカウントリンク機構によりMoodle上のユーザ固有の情報を扱えるLINEチャットボットUIを開発した[4]。これによりユーザは、明示的にログインせずにMoodleを操作でき、プッシュ型での情報配信を受けることも可能となった。加えて、Moodleの標準機能「アナリティクス」用の独自の推定モデルと上述の心的状態の推定機構との連携が可能となるプラグインを開発[5](下図)し、学習者行動の予測に基づくプロアクティブな(成績評価が確定する前に先回りしての)介入により、効果的な安全教育を可能とする仕組みを構築することができた。
[1] Matsui Tatsunori, Tawatsuji Yoshimasa, Fang Siyuan and Uno Tatsuro, "Conceptualization of IMS that Estimates Learners’ Mental States from Learners’ Physiological Information UsingDeep Neural Network Algorithm", In Proceedings of Intelligent Tutoring Systems, 1(63-71), 2019[2] 松居辰則, 生体情報を用いた学習者の心的状態推定と学習支援の試み, 教育システム情報学会論文誌,36(76-83), 2019[3] Toshihiro Kita, Chikako Nagaoka,Naoshi Hiraoka and Martin Dougiamas, “Implementationof Voice User Interfaces to Enhance Users’ Activities on Moodle” In Proceedings of 2019 4th International Conference on Information Technology (InCIT), 1(104-107), 2019[4] T.Kita,C.Nagaoka, N.Hiraoka and T.Molnar, "Development of a Moodle UI Using LINE Chat for Casual Learning asa Part of a Learner Assistive LMS.", In Proceedings of 2020IEEE International Conference on Teaching, Assessment, and Learning forEngineering (TALE), 1(927-929), 2020[5] 喜多敏博, 松居辰則: 学習者の心的状態も加味したMoodleアナリティクスを用いたプロアクティブな学習者支援, 人工知能学会先進的学習科学と工学研究会資料92巻, 2021